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Hirobaジャーナル

2022/03/31
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札幌ドームの誕生秘話&特徴~札幌ドームはなぜこの形になったのか~ <開業15周年特別企画>

※過去に掲載した記事を再編したものです。記載の日時等は当時のものとなりますのでご了承ください。

札幌ドームはいつ?なぜ建てられた?

札幌ドームを建設するきっかけになったことは、以下のどれでしょうか?

  1. オリンピックを開催するため
  2. 大規模コンサートを開催するため
  3. サッカーのFIFAワールドカップを開催するため

A. 3.サッカーのFIFAワールドカップを開催するため

札幌市が1992年7月に2002FIFAワールドカップTM 日本招致委員会に立候補出願書を提出し、翌1993年に札幌市が国内開催候補地に決定されたことを受け、現在の羊ケ丘に約30haの土地を一括取得し、札幌ドームを建設することになりました。

札幌ドームはなぜこの形になったのか!? 札幌ドームの建築条件とは

札幌ドーム建設が決定されてから、まず「札幌ドーム設計・技術提案競技」が行われました。いわゆるコンペと呼ばれるものです。
「札幌ドーム設計・技術提案競技」の応募要項には以下の建築条件が定められていました。

札幌ドームの建築条件

  • 2002年のワールドカップサッカー大会公式戦が開催できること
  • サッカーと野球の両方で使用できること
  • サッカー利用時の天然芝フィールド、野球利用時の人工芝グラウンド、イベント利用時のコンクリート床及び観客席をアリーナの利用形態に対応させるための転換システムを設置すること
  • 景観及び野鳥など生息動物の生態系にも配慮すること

そのほかにも様々な条件がありましたが、中でも2002年のワールドカップのサッカー大会公式戦を実施するためには、FIFA(国際サッカー連盟)の施設基準を満たさなければなりませんでした。FIFAの施設基準の一例としては・・・


・サッカー日本代表(A代表)の公式戦の開催条件である4万席を確保すること
・座った状態で2列前の人の頭がサッカーピッチへの視界を妨げないこと
・全ての座席からコーナーキックが見えること
・乱入防止のためスタンド最前列の前には3m以上の高低差を作ること

このコンペには国内外から9作品の応募があり、事前公開や3回の審査会を経て、1997年2月に最優秀作品が決まりました。

これらすべての条件が満たされており、札幌ドームの所在地である「羊ケ丘」のみならず札幌の自然条件、農業試験場として利用されてきた歴史的変遷を読み取り、自然と人工空間という相対するものを見事に融和・共存させた「原広司グループ」のデザインが審査委員会で最優秀作品に選ばれました。
このデザインこそが、現在の札幌ドームです!

札幌ドームを設計した建築家・原広司さん

1936年   神奈川県川崎生まれ
1959年   東京大学工学部建築学科卒業
1964年   同大学数物系大学院建築学専攻博士課程修了、工学博士
1964年   東洋大学工学部建築学科助教授
1969年   東京大学生産技術研究所助教授、82年同教授
1970年以降 アトリエ・ファイ建築研究所と共同で設計活動を開始。
1993年   梅田スカイビル
1997年   京都駅ビル
2001年   札幌ドーム、東京大学駒場II 地区キャンパス
2005年   しもきた克雪ドーム
2007年   福島県立会津学鳳高等学校・中学校
2016年   今治市みなと交流センター

またこれまでに田崎美術館で日本建築学会賞受賞、ヤマトインターナショナルで第1回村野藤吾賞受賞、京都駅ビル等で建築業協会賞受賞。
現在、東京大学名誉教授。その他、著書も多数。

原広司さんは、随所に斬新なアイデアを取り入れて札幌ドームを設計しましたが、
その原広司さんの札幌ドームの設計アイデアの一部をご紹介します。

1.デュアル・アリーナは眼鏡をイメージして設計

屋根のあるアリーナ(クローズドアリーナ)と屋根のないアリーナ(グラススタンドを持つオープンアリーナ)が向かいあった「デュアル・アリーナ」の形態は、○と○が対になった【眼鏡】をイメージして設計されたそうです!

2.ボウブリッジは箕(み)をイメージして設計

札幌ドームの屋根は、ホヴァリングサッカーステージを通すため、屋根の一部が切り取られた形状をしています。
通常の全部閉じられた屋根と異なり、強度の問題がありましたが、その時、原先生は農作業において穀物を主とする収穫物から不要な小片を吹き飛ばして選別するために古くから用いられてきた道具の箕(み)をイメージしたそうです。
ザルと異なり、半分開いた箕(み)があるなら、札幌ドームもきっと実現可能であると思い、調査しました。
ホヴァリングサッカーステージを屋内に通す開口90mのスパン(支点間距離)は、力学的に屋根構造と併せて考えられており、屋根の一部が切り取られた形状をしていますが、切り取られた部分をブリッジがつなぎ、斜材を加えて支柱で屋根の重さとバランスさせることで、力学的には閉じた屋根と同様の強度となることがわかりました。
この設計を考えるとき原広司さんがイメージしたのが、「箕(み)」だったそうです!
箕をひっくり返すとまさに札幌ドームの屋根のようですね。

3.札幌ドームを「スポーツの庭」に!

原広司さんの設計は、周辺の自然をできるだけ生かし、札幌ドームを広大で緑豊かな「スポーツの庭」に変身させる計画でした。この計画は「ガードニング=庭造り」であり、札幌ドームの敷地にはオープンアリーナに置かれたホヴァリングサッカーステージの天然芝はもちろん、敷地内にはたくさんの植栽の緑で囲まれた庭を創造しました。

4.国道36号沿いには小さなまち“タウン”を!

北ゲート側には、レストランやグッズショップなどを内包した線形のまちが形成されており、都心方向に対して魅力的なアメニティを与える設計にしました。現在も「タウン」としてレストランやグッズショップが並び、たくさんのお客さまが集う小さな“まち”として親しまれています。

5.シングルスロープと呼ばれるすり鉢状のスタンドに!

原広司さんは、「札幌ドームの主役は観客である!」と考え、シングルスロープと呼ばれるすり鉢状のスタンドを設計しました。
プレーを観戦することも大きな目的ですが、スタンドからほかの観客を見渡せることが大事。プレーヤー(選手)はイベントの主役で観客一人ひとりも主役です。
一つのプレーを全員が見る。一瞬のドラマに全員が一喜一憂する。
そのとき観客同士の表情やリアクションが見えることで空間全体に一体感が生まれ、観客が観客に興奮する。そんな設計になっています。

建築風景

札幌ドーム建設の舞台裏

当時、札幌市役所職員で札幌ドームの建設を担当していた「溝口昇(現在は株式会社札幌ドーム 施設部専任部長)」が語る、札幌ドームの建設の舞台裏

設計・技術提案競技(コンペ)も 一苦労

札幌ドームを建設することが決まってから、設計・技術提案競技を行うまでには、応募要項の作成、審査委員会の審査員の選定、さらにコンペとしては日本初となるWTO対応などがありました。
中でもWTO(世界貿易機構)の対応として、世界中から提案を受け付けるため応募要項を日本語だけでなく、英語訳のものを準備したり、コンペの透明性を高めるため、提案作品の事前公開・ヒアリングの市民公開など初めての試みを行いました。かなりタイトなスケジュールでありましたが、こうしたプロセスを経てデザインが決定しました。

建設中は「スケジュール」と「予算」がカギ

竣工が2001年5月と決まっており、そこに間に合わせるためには、様々なことが同時に進行してきます。また、工事のやり直しや事故が発生すると、工事がストップしてしまいます。スケジュール通りに工事を進めるためには、安全にかつ丁寧に進める必要がありました。
また、札幌ドームは札幌市民の皆さまが納めていただいた税金を投じて建設されたものです。決められた予算内で理想通りの施設を完成させるために、いろいろな分野で価格交渉し、無駄のない工事はもちろん、完成後のランニングコストを少しでも抑えられる施設になるよう知恵を絞りました。

延べ55万人の工事関係者とともに作り上げた札幌ドーム

札幌ドームの建設には、延べ55万人の工事関係者が携わりました。私は連日現場に常駐し、設計・工事監理スタッフとの多岐にわたる設計図面の修正・確認・決定と施工計画書のチェックや設計変更・分部検査の対応など行っていました。とにかく完成までの工期が非常に厳しかったので、現場での瞬時の対応が求められていたからです。

一方で、これだけ多くの関係者が巨大な施設を建設すると、やはりトラブルや想定外のこともたくさん発生します。時には、工事関係者へ必要な指示や指導を行いましたが、「いいものを作り上げたい」といった気持ちはみんな一緒でした。私は当時、札幌ドームの建設を監理する立場でしたが、55万分の1の作業員の中の一人だったと今でも思っています。原広司先生をはじめとする設計チームや、施工を担当する工事担当者など、本当に素晴らしい仲間に支えられて完成したのが札幌ドームなのです。

工程表・工事データ
視察対応で札幌ドームを説明する溝口

札幌ドームが完成しても満足感なんてない。
むしろ不安のほうが大きかった。

ようやく札幌ドームが完成。でも不思議と満足感や喜びはありませんでした。むしろ、今後札幌ドームが問題なく稼働できるのかどうか、不安のほうが大きかったです。
でも、オリンピックに匹敵する規模と注目度を有する世界最大級のスポーツイベントであるワールドカップが無事終わるとようやく建設目的を果たしたという達成感と感動に浸ることが出来ました。

15年たった札幌ドーム、
今も市民のみなさんに利用していただくことが何より嬉しい。

札幌ドームへのご意見やご質問は、メールやお電話などで多数いただき社員全員に共有されますが、先日とてもうれしいご意見があったのです。
それは、「札幌ドームが大好きで、敷地内を散歩するのが楽しい」といった趣旨のご意見でした。15年たった今もイベントだけでなくさまざまなかたちで市民の方に親しまれているのが、何よりも嬉しいです。また、もっと市民の方に札幌ドームに足を運んでいただき、もっと親しまれる札幌ドームになることを私は願っています。

札幌ドームのすごいところ

札幌ドームの屋根は、除雪いらず!

雪国ならではの工夫がされているのは、日本のドームの中でも札幌ドームだけ。一般の家庭でも屋根の雪降ろしは危険で大変な作業ですが、札幌ドームの屋根はなんと除雪いらずの設計です。札幌ドーム周辺では、冬期間北西から南東に向かう卓越風が吹きますが、この自然の風だけで雪を吹き飛ばしてくれるよう、ドームの形を固定型シェル(貝)型にしました。これは、積雪を減らすように作られた札幌ドームならではの形状です。札幌ドームは、自然と上手に共存していくような設計になっています。

省エネルギーに配慮した札幌ドーム!
空調はなんと座席の足下から送風しています!

札幌ドームでは、アリーナ内すべてを冷暖房するには多くのエネルギーが必要になるため、スタンド席の足下から冬は温風を、夏は冷風を吹き出す局所空調システムを採用しています。このシステムでは、座席に座っているお客さまに直接送風されるため、省エネルギーを図ることができます。また、天井の開閉式パネルとオープンアリーナ・クローズドアリーナの開口部の操作で自然換気を行います。また、壁のガラス面などから自然採光も活用し、エネルギーの消費を極力抑える設計になっています。

アリーナは地下2階!半地下構造で断熱効果抜群!

札幌ドームはアリーナの大部分が土に囲まれた半地下構造となっています。
これにより建物全体の断熱性が高まり、アリーナ内の温度調節に大きく貢献。
冷暖房用のエネルギー消費を抑えることが出来ます。さらに、ドームの半地下設計によってドーム壁面の高さが低くなるため、大きな建物の周辺に吹きやすい、いわゆる「ビル風」を抑える効果もあります。

世界初のホヴァリングサッカーステージで、
野球とサッカーの両立が可能に!

普段はオープンアリーナで天然芝を育成させている札幌ドームのホヴァリングサッカーステージですが、試合の前にドームの中に移動します。
ホヴァリングサッカーステージは、縦120m、横85m、重さは何と約8,300tもあります。想像しにくいかもしれませんが、この重さはジャンボジェット機約30機分です。 そんなに重くて大きいホヴァリングサッカーステージを動かすために、ホバークラフトのように空気圧で7.5cm浮上させ、重さを1/10まで軽減しています。 また、34個の車輪を使って分速4m(回転寿司の回る速度と同じくらいゆっくり)で進みます。
この移動機構は造船技術などに用いられていますが、実際に模型実験を繰り返し、様々な検証が行われました。

屋根から突き出る国内唯一のドーム展望台!

札幌ドームの展望台は、国内唯一のドーム展望台です。
53mの高さから、壮大なアリーナの全景とともに、札幌市街や手稲山、夕張岳までひろがる大パノラマが楽しめる場所です。
アメリカの球場ではプールを備えた施設もあり考えただけでワクワクしてしまいますが、この発想を原広司さんは札幌ドームに取り入れ、札幌ドームでは「視線」というテーマで、試合中に展望台から満席になったドームを見下ろすことができ、一方札幌の市街も見渡せるユニークな展望台を設計しました!
現在は、ファイターズ戦・コンサドーレ戦で展望台特別営業を行っています。まさに、原広司さんが目指した感動的な展望台を多くのお客さまに楽しんでいただけるようになりました。

展望台はこちら

オープニングセレモニー

2001年5月札幌ドームが竣工し、2001年6月2日に札幌ドームが開業しました。
札幌ドームの記念すべきお披露目のオープニングセレモニーは、楽しいアトラクションが盛りだくさんで、「夢の実現」をテーマに、ハイパワーレーザーや大型投影機などを使い、ドームならではの広い空間や高さを効果的に演出しました。また、大編成の音楽隊や和太鼓、チアリーディング、大勢の子供たちなどが出演しました。大黒摩季さんの熱唱や徳光和夫さんの司会などとともに、札幌ドームの誕生を祝い、大いに盛り上がりました。

開業15周年記念イベント&記念グッズ・弁当!

こうして生まれた札幌ドーム。15年の時を経て札幌ドームはまもなく4,000万人のご来場者を迎えようとしています。
いままで支えていただいた皆さまに15年間の感謝の気持ちを込めて、記念イベントの開催や限定グッズ・弁当を販売します!

開業15周年記念イベント「サッポロ モノ ヴィレッジ」開催!

北海道内各地で活動する1000名を超える作家が札幌ドームに集結する、北海道最大のハンドメイドフェスティバルを、札幌ドームで初開催します!
アート、雑貨、陶芸、革製品、ファッション、アクセサリーなどオリジナリティー溢れるハンドメイド作品【モノ】が集まります!

15周年記念グッズ&弁当販売中!

オリジナルトートバッグ

札幌ドームの写真や15周年ロゴをデザインしたトートバッグ。
札幌ドームの建設中の写真もデザインされており、札幌ドームの歴史を感じられるバッグです。

小さく折り畳めるので、観戦時のエコバッグとしてもお使いいただけます!

[価格] 3,000円

今治バスタオル

今治タオルの品質基準を満たしたシンプルで使い心地の良いバスタオルです。
札幌ドーム15周年ロゴ刺繍入り!札幌ドームのお土産にもピッタリ!

[価格] 3,000円

オリジナルトートバッグまたは今治バスタオルをご購入いただくとミニトートバッグを先着でプレゼントいたします!

グッズジャムはこちら

弁当メニューはこちら

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